2009年8月20日
(株)情報通信総合研究所

ICT経済、国内外の経済政策が奏功し回復局面へ
−輸出底打ちと在庫調整終了で生産持ち直し−

 (株)情報通信総合研究所(本社:東京都中央区、代表取締役社長:平田正之)は、情報通信(以下、ICT)産業が日本経済に与える影響を把握するために、九州大学篠_彰彦教授監修のもと作成した「ICT関連経済指標」を用いた分析を「InfoCom ICT経済報告」と題して四半期ごとに公表しております。実質GDPは5四半期ぶりに3.7%とプラスに転じ、足元の国内景気に下げ止まり感が見られる中で2009年第2四半期のICT経済の状況がまとまりました。

 なお9月上旬には詳細データとともに同経済報告を弊社Webサイト上で公開しますので、合わせてご利用ください(http://www.icr.co.jp/ICT/)。

詳細版
A4縦・本文10頁・約260KB
press20090820.pdf

2009年第2四半期、足元のポイント

 2009年4-6月期のICT経済は、輸出減少の底打ちから在庫調整の急速な進展により、生産が持ち直した。6月には生産の減少幅が在庫の減少幅を下回り、回復局面に入っている。中国国内の内需刺激策によるデジタル家電需要の増加により、電子部品関連の輸出が回復したことに加え、国内の追加経済対策による液晶テレビ需要の増加により生産が持ち直した。設備投資(民需)は依然低迷しているものの、ICT生産や輸出の底打ちが、設備投資(民需)の増加にまで波及するかが、今後のICT経済の注目点である。

今回のポイント

  1. ICT関連在庫の調整は、ITバブル崩壊後の10カ月に比べ長引くと想定されていたが、急速に進展した。2009年6月に入り、鉱工業生産全体の減少幅は在庫の減少幅を上回って依然在庫調整局面にあるが、ICT生産の減少幅(-21.6%)はICT 在庫の減少幅(-22.4%)を下回っており、45度線を越え、回復局面に入っている。
  2. ICT関連生産と輸出は2008年10-12月期以降、大幅に減少したものの、足元では4カ月連続で生産の減少幅が縮小している。
  3. ICT関連サービスは2009年1-3月期に生産よりも遅れて減少幅が拡大したが、4-6月期に入り底打ちした。
  4. 一方、設備投資の先行指標となる機械受注は減少が継続している。
  5. ICT関連消費は移動電話通信料とインターネット接続料を中心に増加を維持している。
  6. ICT経済は、海外経済の持ち直しにより輸出の改善、生産の在庫調整の進展が続くとみられる。今後の注目点はこの動きが本格回復のキーになる設備投資の下げ止まりから増加につながるのかという点である。

2009年第1四半期および足元の動向

 図表は詳細版に掲載しております。press20090820.pdf)

(ICT関連生産)

  • ICT関連生産は4四半期連続で減少したものの、減少幅が2009年3月以降縮小しており(前年同期比マイナス29.7%、図表1、2)、全12品目中1品目(その他の電気機械)で前年比増となった。背景には、在庫調整の急速な進展がある。

(ICT関連在庫)

  • そのICT関連在庫は、2008年第4四半期で増加幅が急拡大していたが、集積回路、電子部品、民生用電子機械などの在庫調整が急速に進展したこともあり、2009年第2四半期は14四半期ぶりに前年比で減少(同3.9%⇒マイナス20.7%)した(図表1、3)。大幅な減産の効果と国内外の経済対策によるデジタル家電需要の増加による電子部品の出荷の持ち直しが影響した。
  • 2009年6月に入り、鉱工業生産全体の減少幅は在庫の減少幅を上回って在庫調整局面にあるが、ICT生産の減少幅(-21.6%)はICT 在庫の減少幅(-22.4%)を下回っており、45度線を越え、回復局面に入っている。(図表2)。

(ICT関連サービス)

  • ICT関連サービスは2四半期連続で減少した(同マイナス0.8%)もののソフトウェア系(受注ソフトウェア、ソフトウェアプロダクト)の減少幅縮小により、下げ止まり感がある(図表1)。企業収益の低下による設備投資全般の低迷により、新規受注ソフトウェアは投資抑制の傾向にあるが、セキュリティ対策や運用・保守関連投資は堅調である。

(ICT関連消費)

  • ICT関連消費は、10四半期連続で増加を維持し(同1.9%、図表1)、移動電話通信料とインターネット接続料が増加に寄与した(図表4)。

(ICT関連設備投資)

  • 民需は、4四半期連続で減少(同マイナス23.3%)した(図表1)。最大の要因は半導体製造装置だが、減少幅はわずかに縮小した。一方、電子計算機の減少幅は拡大しており、景気悪化に伴う設備投資の低迷が背景にある。
  • 官公需は増減を繰り返していたが、今期は増加を維持した。

(ICT関連輸出入)

  • 減少幅が拡大していたICT関連輸出入は2009年3月以降は縮小している(輸出は同マイナス28.8%、輸入は同マイナス25.2%、図表1)。特にICT関連輸出は半導体など電子部品、電算機類など全品目で減少幅が縮小しており、全輸出の持ち直しに比べ急速なペースで回復している(図表5)。背景には中国国内の内需刺激策(家電家郷(かきょう))によるデジタル家電関連需要の増加による中国向け電子部品の輸出の持ち直しがある。

まとめと今後の展望

  • ICT関連生産は、在庫調整が足元(6月)で終了したとみられることにより、生産活動が今後本格回復につながるかが注目される。輸出の順調な回復や国内経済対策による需要増の継続性如何によっては、生産の本格回復には時間を要する可能性がある。
  • 特に本格回復へつながるかという点では、成長のエンジンといわれるICT関連設備投資の大幅減少が続いていることが懸念される。
  • ICT関連輸出の回復は、海外の在庫調整の急速な進展と、中国の内需刺激策によるデジタル家電需要の増加による電子部品需要の増加が背景にある。この動きが続く間に、米国の景気が下げ止まりから回復に持ち直すことが期待される。
  • 今後は国内の追加経済対策の効果が、ICT経済においてエコポイント制度によるデジタル家電(最終製品)や電子部品など関連部品需要で引き続き期待できる上、スクール・ニューディールによる官公需のパソコン需要増加にも期待できる。ただし、消費を中心とした需要の喚起が一時的なものに留まるのか、あるいは持続的な回復につながるものなのかについては、今後の動向、特に生産活動の活発化とそれに伴う設備投資の回復を注視する必要がある。
  • 企業の設備投資は売上高の減少に伴うコスト削減圧力により低迷しており、ソフトウェア受注は当面低調となることが想定され、特にソフトウェア開発分野での影響が懸念される。一方、社会的な要請が高いセキュリティ対策投資や運用・保守などの分野での情報化投資の底堅い需要が期待される。
  • 家計所得の減少や失業率上昇など家計部門の厳しさが続き、当面消費全体が弱含みとなる可能性が指摘されている中で、ICT関連消費については巣籠り消費などコスト節約志向から利用が伸びてきたeコマースなどの市場が今後も堅調に推移し続けられるのか注目される。

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